それからなにを話していいのかわからなかった。
付き合っているとはいえ、互いのことをまったく知らない。
そのまま学校に着くと、結城君はもうストレッチを始めていた。
「こんにちは」
私が声をかけると、結城君は隣の香川君にチラッと視線を送った。
一緒に来たことがバレてしまった。
胸がチクチク痛むのは、「こんにちは」と返してくれた結城君が、私と視線を合わせてくれないから。
「榎本さん、今日のメニュー」
「ありがとう」
マネージャーといっても水泳に関してはド素人。
最近必死に勉強はしているけれど、経験がないからメニューの組み方もわからない。
だから結城君がいつも組んでくれている。
それを卓君にも渡すと……。
「茜。このサイクルマイナス5秒でいい」
「香川、無理するな」



