「よくわかんねぇけど、茜のこともっと知りたくなったから、さ」
「……うん」
一緒にアイスクリームを食べてから、なんだか彼の様子が変わった。
「そう。私は別に話すようなこともないよ」
結城君や卓君のように、打ち込んできたものもない。
なんとなく学校生活を送って、流されてきただけ。
競泳に出会うまでは、こんなに胸を熱くするというようなことはなにもなかった。
「普通に学校行って、普通に生活してる」
彼に話しながら寂しくなった。
結城君の夢を追いかけるだけでなく、自分も夢を持たなくちゃ。
「ふーん」
彼が肩から掛けたエナメルバックは、所々傷ができている。
きっと雑に扱っているのだろう。
そんなところが男の子らしいと、妙なことを考えたりした。



