「あの噂は本当なの?」


どうせ私と卓君が手をつないで歩くところを、クラスメイトに見られている。
嘘をついたところで、いずれはバレる。


「ホント」

「なんで!」


今度は泉が私に突っかかってきた。


「茜は結城君が好きなんでしょ?」

「ちょっと声が大きいよ。お母さんいるんだから」


慌てて泉を制すると、理解できないというような顔をして私を見つめた。

私だって、どうしてこんなことになってしまったのか、理解できない。


「好き……だよ」

「だったらどうして、香川君なの?」


声のトーンを下げた泉にそう聞かれると、今まで抑えていた感情が爆発しそうで慌てた。


「こうするしかなかったの」

「茜?」


大声で泣きわめきたい。
でも、それを我慢してそう答えると、ポロリと涙がこぼれていった。