「水泳を超えないと無理かなぁ」
理佐は大きな溜息をついた。
彼にとって水泳という存在は大きなものに違いない。
それを超えるなんてどう考えても無理。
「片思いでいいの」
今は見ているだけで幸せ。
彼の頑張る姿は、私も勇気づけてくれる。
「そんなの、切ないじゃん」
「でも、邪魔したくない」
私はきっぱりそう言い切った。
彼の水泳の邪魔をしたくない。
きっと、全国ナンバーワンじゃなく、世界を目指しているから。
「結城君のファンなの」
笑ってみせると、理佐は「そっかぁ」と複雑な顔をしながらも、納得してくれた。
本当は私だって……彼と付き合えたらうれしい。
でも、輝いている結城君に恋したのだから、邪魔はしたくない。
相反する気持ちが、私の中で戦っていた。



