結城君が電光掲示板を確認して、小さなガッツポーズをする姿は、辛い練習を乗り越えてきた証。

泳ぐ前も泳いだ後も、プールに一礼を忘れない礼儀正しさ。

リレーで、他の仲間と無邪気にハイタッチする姿。

それに……バタフライが泳げなくても、前を向こうと必死な彼の精神力の強さ。


それらすべてが私の心をとらえて離さない。


「結城君が試合に出られなくても、必死に練習する姿は素敵だと思う。だから、体を絞ろうと頑張っている卓君も応援したい」


卓君が私を無理やり彼女にしたことは、許せない。

でも、競泳選手としての彼は別。
真剣に取り組むというなら、応援する。


「茜……」


すると彼は目を見開き、言葉を失くした。

しばらく彼はなにも言わなかった。

私は溶けそうになったアイスを淡々と口に運び、彼が口を開くのを待った。