「皆、結城結城って。バカじゃねぇの?」
「卓君?」
一瞬彼の顔が悲しげに見えて、思わず声をかけると「いいからさっさと食え」と話をはぐらかされてしまった。
やっぱり、結城君となにかある。
でも、結城君に卓君の名前を出した時は、ごく普通の反応だった。
結城君の方に、嫌悪感などまるで感じなかった。
一体なにが?
過去の成績は常に結城君が上だったようだけど、もしかしてそれが関係してる?
「私、水泳好きなの」
彼が結城君に抱いている憎しみに似た感情は、水泳と切り離してほしい。
体を絞るとまで言っているのは、真剣に競泳の世界に戻ろうとしている証だから。
「きっかけになったのは結城君だった。でも、彼が表彰台に乗ってたからじゃない」