着替えを済ませた卓君は、当たり前のように私の手を握る。

結城君がいないのだから、手なんてつながなくていい。
彼は、結城君に見せつけるだけのために交際しているような気がしてならない。


手を振りほどこうとしたけれど、卓君は許してくれない。


「なぁ、お前甘い物好き?」

「えっ?」


思わぬ質問に驚いたけれど、頭に浮かんだのはチョコチップクッキーをかじる結城君の姿。


「まぁ」


あいまいな返事をすると、彼は私の手を引いたまま足を速める。


「それじゃ、行くか」

「行くって、どこに?」


私はすぐにでも帰りたい。
この手を離したい。

だけど卓君は返事すらせず、駅の方へと足を進めた。


卓君が向かったのは、アイスクリームショップ。
少し前に開店して、泉と「いつか行こうね」と話していたお店。