ストップウォッチを私に投げた彼は、結城君をにらみつける。
「他人の女に手出すな」
「卓君、違う……」
「榎本さん、着替えるから」
すると結城君は、私にそう言う。
それは、ここを出ていけということだろう。
「はい」
私はうしろ髪を引かれながら、更衣室を出た。
すると……。
「キャッ」
すごい力で腕を引かれ……。
「茜」
そのまま壁に押し付けられて、卓君の両手が私の行く手を阻むかのように、顔の両横につけられた。
髪からポタポタと垂れる水滴が、私の足に零れ落ちた。
「忘れるな。お前は俺の……」
「わかってます!」
そんなこと、言われなくたって。
「計測するから早く戻って」
冷静を装ってそう言うと、卓君は顔をしかめてしぶしぶプールに戻った。



