「実はそれまで平泳ぎの選手だったんだって。でもコーチに言われてバタフライに転向して、大成功らしいよ」
バタフライが結城君に合っていたということか……。
「で、現在彼女なし」
いきなり直球。
ニヤリと笑う理佐は、さらに続ける。
「タイプは清楚な女の子。あまりグイグイ来られすぎると、苦手になっちゃうみたい。人気あるから相当告白されてるみたいだけど、今は水泳が大切だからと断り続けてるんだって」
やっぱり、そうか……。
"今は水泳"というのは、なんとなくわかっていた。
「茜みたいな子、タイプかもよ」
「違うでしょ」
清楚という訳ではない。
ただ、グイグイいける度胸がないだけ。
「爽やかだったよね、彼」
「うん」
人気があるのもうなずける。
全国大会で活躍するような選手なのに、練習の時もプールに向かって一礼を忘れないような礼儀正しさがあり、昨日だって、友達ととても仲がよさそうで、威張り散らしているような様子は見られなかった。



