きみへの想いを、エールにのせて


結城君の前で、私たちの交際をアピールしているようにしか見えない。

私が嫌がっていることを知っていて、どうしてそこまで……。


「そっ、か。榎本さんのおかげだね」


結城君が少し悲しげに笑った気がした。


それからすぐに練習に入った。

当然のことながら、結城君と同じメニューという訳にはいかない3人は、ゆっくり肩慣らしから。

それでも卓君は結城君のライバルだっただけのことはある。
さすがにフォームは美しく、水面を滑るように泳いだ。


あとのふたり、小栗(おぐり)君と脇田(わきた)君は、ブランクがあるせいかやはり進み方が遅い。

いや、結城君が速すぎるのだろう。
金づちの私から見れば、小栗君も脇田君も十分立派な選手だった。


「茜」

「はい」


卓君は結城君に見せつけるかのように、私を下の名前で呼ぶ。