『茜』と呼び捨てした卓君の背中が、笑っているようだった。
お前の恋はこれで終わりだと。
それ以降、結城君は口を開かなかった。
ただ私を見つめ、苦しげな顔をしただけ。
そんな顔で私を見ないで。
もしかしてこんなことがなければ、私の手を握るのは卓君ではなく、結城君だったかもしれないと考えてしまうから。
「茜、行くぞ」
マネージャーなら、ここに残るべきだった。
でも、どうしてもできない。
卓君の言葉に小さくうなずき、結城君に背中を向けると、頬に透明の液体が伝った。
プールから離れると、卓君の手を思いっきり振りほどいた。
「満足でしょ?」
「なに怒ってるんだよ」
彼は素知らぬ顔をして私の隣をついてくる。



