それでも"一流"だった彼には、周りの期待という重圧がかかる。
その期待に応えられないくらいなら辞めようと思ったのかもしれない。

それに、一度昇りつめた場所から落ちるのは、誰だって怖い。


「茜、すごくできるようになってきたじゃん」


泉が私を褒めてくれる。
苦手だった数学は、偏差値がグーンとアップした。


「ありがと。私、絶対に受かるから」

「うん。私も一緒に南高校行きたいよ」


泉と一緒に行きたい。
いや、結城君と。


私と泉がガツガツ勉強するようになると、理佐と雄介君も受験モードに入ってきた。

「茜のせいで勉強しなくちゃいけなくなった」と笑う理佐も、志望校のレベルをひとつ上げた。