A RUTHLESS KILLER


「……っざけんな、なんだよこれ。ふざけやがって」


 全裸になっている自分がいて、張り付けられている現実に目を背けたかった。腕や足を力任せに動かしてもびくりともしない。


 あの女をつけてあの家に忍び込んだ。
 体の線が細いわりには大きめの尻をしていて、ウエストのくびれがなんともいえない。襲おうとしたところまでは覚えている。


 忍び込んですぐにクロロホルムを嗅がせて意識を飛ばそうとして________




「そうだ。逆にやられたんだ」

 こうなった経緯がわかった中西は腹立たしさと、自分の無様な姿に豪快に舌打ちをした。



「ハメられた。クソ! クソ! クソ!」




『いいか、これだけは覚えとけ。ドラマなんかでよく見るけどな、開けたドアの両サイドとドアの後ろには充分すぎるほど気を付けろ。やられるとしたらそこだぞ。まじで』



 戸張さんにそうやってしつこいくらいに言われてきたじゃないか。そんなドラマみたいなことが起こるかよって鼻で笑ったこともあった。


 甘くみていた。あんな女一人どうってことない。気持ちに余裕があった。


 でも、あいつは誰なんだ。あの女がこんなことをできるはずがない。あんな細い体で俺をこんな風に縛り上げるなんて不可能だ。


 だとしたら仲間がいるのか? 男か? もしかしたらここを監視されているかもしれない。辺りを警戒し、神経を集中させた。