台の後ろに隠れて身を潜め、二人の様子を伺っているが、戸張の顔は蒼白だ。体が小刻みに震えている。喉がからからになった。
狂喜乱舞とはこのことだ。あいつらは殺人鬼だ。快楽を得るために人を殺している。
非現実的な光景をまざまざと見せつけられ、浴槽の中に浮かんでは沈む頭部、腕だか足だかわからない物が見え隠れしている、その生臭い湯の中でアリと春麗がヤっている。
こんな状況を見て冷静でいられるほうが問題がある。
恐れが自分を支配し始めた。それに食われると制御がきかなくなることを戸張は知っていた。
あせる気持ちを安定させようとすればするほど逆効果だ。
心拍数は上がり、手は冷たくなる。冷たい汗が全身を覆う。鳥肌がたつ。
それでも自分のことは棚上げにして、この殺人鬼二人を殺さないといけないという使命に勝手にかられていた。
春麗を犯そうと企んでいたことなど消え去った。
こんな狂った女をどうにかしようなど、誰も思わない。この現状を見せつけられたら、そんな気にすらならなくなった。
まずはどっちから片付けるかだ。
二人を一気に片付けるのは不可能だ。
一人ずつしか殺れない。
ここからナイフを投げたとして、男の方の頭に刺さればあとは女だけだ。
女一人ならなんとかなるはずだ。
戸張は腰のナイフに音をさせないように慎重に手を伸ばしてきつく掴み、唾を飲み込んだ。

