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「おまえ、なんでここに連れて来られた?」
落ち着いた頃合いを見計らって経緯を聞いた。
「……ここに、入るところを、み、見たから、それで、生かしてはおかないって」
「ここからじゃなく?」頭上を指差した。
「……違う」
涼子はくるりと辺りを見回し、
「確か、壁のところから入って行ったから、んー……」
「壁?」
男はあたりを見回し、壁に手をついて調べるように一周回った。涼子はそれを黙って目で追う。
「特に扉らしきものはないと思うが」
「そんなはずないです。たぶん、ここ。ここらへんだと思う」
涼子はこの地下室の位置がどうなっているのか思い起こし、ドラム缶が二つ置かれているところの後ろの壁を指差した。
「ひっ。な、なんでドラム缶が」
「おい、なんだよそれ、今更かよ。それ、俺とその女が詰め込まれてたやつだよ」
「……詰め込まれたって」
「ま、抜け出たからここにいんだけどな」
確認するように扉を小さく叩きながら音を確かめていた。
その後ろを涼子がついてくる。一人じゃ怖いのだ。
「……ああ、ここか」
男は壁の一点を手のひらで触ってどうなっているのか確認している。
外の物音を確かめる。外に誰かいるかに耳を澄ませていた。

