女は(静)はこの状況だというのにぐっすりと眠ってしまっていた。
殺人鬼は男に気づかれないように素早く静のところへ移動し、素早く口を手で塞ぎ、静が何をされているのか気づく前に、首もとに当てたナイフを滑らかに横にひいた。
ナイフで切ったときの音を消すには雨音で充分だが念には念をいれた。
吹き出る血を飲み込ませるように首を前に折り、音を立てないように静の体を横に寝かせた。
男は全く気付いていない。じっと一点を見つめていて微動だにしない。
次はこの男を殺せば終わりだ。
血のついたナイフを静の服できれいに拭き、男の側へ移動しようとしたとき、階上でにわかに動きがあった気配を感じた。誰かが歩いている。
男もそれを感じ取っていた。
一度戻った方がよさそうだ。
手にしていたナイフを懐におさめ、悔しそうに男に一瞥くれると、背中からするりと外へと出て行った。

