「アリさーん、私も抱っこー」

 べっとべとに甘える春に小太郎が、

「お前はちゃんと歩けんだろうが。ぶりっこも大概にして自分でしっかり歩けよタコ」と突っ込む。

「やー。小太郎君の意地悪ー。メイちゃんにばっか優しいんだもん、きらーい」と春も負けじとやり返す。

「別に俺はお前に好かれなくてもぜんぜんいい」

「ひどいー!! アリさん、小太郎が苛めるー」

 アリの胸に顔をうずめてわざとらしく守ってもらおうとした。

「ほんとおまえ鬱陶しいな。そこまでできるのもすげえぞ。神経図太いっていうか、やっぱ鬱陶しい。さすがだな」

「ぜんぜん誉めてないよそれ!」

「誉めてなんかねえし。けなしてんだよ」

「ひどーーい! 女の子にそんなこと言うの信じられない! ぜったい女の子に嫌われるやつだよそれ!!」

「小太郎、いいからいいから。僕がちゃんと連れてくから」

「っとにお前は甘いんだよ。こんなやつ放っておけって。むしろ捨ててしまえ」

「小太郎くん!!!」

 文句を言いながらも小太郎は笑っていて、

 そんなやりとりを、眠りに落ちる前のゆらゆらした気分の中で、メイもまた暖かいものに包まれている気分で聞いていた。