「そういえばさ、このキャンプなんだけど、静って今日の昼には帰るって言ってなかったっけ?」
涼子がジュースを一気に流し込み、思い出したとばかりにアリに視線を投げた。
「ああ、そういや確かそんなこと言ってた気がする。で、みんなには悪いから帰るときはひっそり帰るって言ってたっけ」
「えー!! 佐々木さんしっかりしてくださいよー。それ思い出すの遅くないですか? こんなに汗だくになって探し回ったんですよ。ひどすぎー!」
「ごめん春ちゃん。俺もまさかこうなるとは思わなかったし、帰るにしても俺らには一言言うでしょ。だから黙って帰ることはないって思ってたから」
「もういいですよ。これで帰ったってことが分かったじゃないですか。てか、もしかして三人で喧嘩でもしたんですかあ? お部屋だって一緒だったんだから、昨夜何かあって大喧嘩しちゃったとかあ?」
「春! ほんとに怒るよ!」
ずかずかと人の事情に踏み込む春に対しとうとうメイが大声を上げた。
「きゃ」とわざとらしくびっくりしてアリの背中に隠れ、アリは「まあまあ」と二人をなだめた。
「とにかく、そういう事情なら帰ったって考えてもおかしくないよな。で? 春の言う通り喧嘩とかなかったのか?」
「小太郎まで!」
「いやいやいい、いい、俺がいけないから。メイちゃんかばってくれてありがとう。でも、うん、喧嘩はしてない」
佐々木がこの話は終わりとばかりに、
「本当に帰ったのかもしれない。これ以上みんなに心配かけたくないからあとは俺でなんとかするよ」
「私も一緒に」すかさず涼子が佐々木と目を合わせて頷いた。

