しばらくそのままで落ちてきた物の様子を伺ったがなんの気配も動きもない。
男は乾いた喉に生唾を無理矢理落とした。何が落ちてきたのかを確かめるために慎重に警戒しながら近づく。
落ちてきた場所に横たわっているのは、血だらけになってはだけた背中を丸出しにした女だった。
土と血で全てが汚れている。頭が濡れているということは水攻めにされた証拠だ。
男はこの状況でもにやつきを抑えられなかった。
女をこちら側に向け首に手を当てるとまだかろうじて息がある。失神しているだけだ。
面白い。
男は女を抱きかかえて下におろすと頭からつま先まで眺めまわし、来ていたシャツを脱がそうと手をかけた時、昼間見たあのグループの一人だということを思い出した。
「なるほど。あの野郎本当に皆殺しにする気か」
男は女の服に手をかけていた手をひっこめた。
ここで犯して殺すのは簡単だ。本心ではそれをしたい。
しかし、ここにはあいつがいるし、あいつの方がここの構造は詳しいはずだ。
まずここを抜け出すのが先だ。そのためには一人よりも二人の方がいい。
こいつを生かしておけば囮にも使える。
「それからでも遅くはねえか」
そう結論づけると男は女の意識を取り戻させることに集中した。

