A RUTHLESS KILLER


 男は物音がしたのを聞きのがさなかった。

 金属の擦れる音が響いた直後、扉が開き月の光が入り込んできた。と同時に何かがこちらへと落下してきた。


 男がここが地下だと気づいたのはここに落とされてしばらくしてからのことだった。

 痛む体になんとか力を入れて電気のスイッチを探し、壁に手をついて部屋中を歩き回った。電気は薄暗く、暗くてどうなっているのか分からなかった。ほとんど一周する間に何かにつまづいたりぶつかったり、柔らかいなにかの感触を確かめながらこの中がどうなっているのか把握した。

 スイッチに指が触った時、これで助かると感じた。ぱちんと音を響かせた。ほっとするのとほぼ同時に地下室の中の光景に息を飲んだ。


 自分が落ちた場所は柔らかかった。そして何度か跳ね上がったのを覚えている。そこで記憶がなくなり、意識が戻ったとき、逃げようとして更に下に落ちた。

 そこは巨大なトランポリンが置かれていた。背丈と同じ高さに設置され、トランポリンの下の床には何かの小骨が散乱していた。

 反対側にも同じトランポリンがあり、その上にも扉がある。


 今、何かが落ちてきたところは自分が落ちたところの向かいの扉の下だ。

 同じように数度跳ね上がったが、そこから逃げようとする動きはなかった。

 大きさからして間違いなく人間だろう。

 既に死んでいるのか。男は地上で何かが動いたのを察知し咄嗟に電気を消して身を隠していた。既に首からの血は止まっている。失神している間に運よくおさまっていた。