今度は足首をひっつかみ仰向けにしたままの状態で引きずりながらログハウスの方へ歩く。
シャツがめくれ背中が地面に擦れているが服を直す力は残されていなかった。
石と土に後頭部がこすれ髪の毛がぶちぶちと抜けていく。
耳が小石ですれて血が滲む。
残された力で指を動かし草を掴んで留まろうとするが、草すらもしっかりと握れない。
誰か助けて! 佐々木君、助けて!
心の中で叫んでみたところでそれは誰にも聞こえない。どんなに悲鳴をあげたところで誰一人起きては来ない。
寝る前に皆で飲んだコーヒーには、誰にも気づかれぬように睡眠薬が落とし入れてあった。
何があってもどんなことが起こっても明日の朝まではぐっすり眠っているはずだ。
ログハウスの裏手には、地下に行ける扉がある。
胸元までめくりあがっているシャツは破れ、布切れに変わり果てようとしていた。
殺人鬼は、土と血でべとべとになった静を勢いよく地下へと放り投げた。

