「どこへ行くの? そっちじゃないと思うけど」
階段の横の暗闇から声がして男は肩を跳ねさせた。
「……ああ、おまえか、俺を閉じ込めたのは」
「さあね。でも、ここはあんたの家じゃない」
「そんなことはどうだっていいんだよ」
「忠告したはずだけど、聞けないのかな? それとも聞く気がない?」
「忠告? ああ、この紙切れのことか。こんなもんで俺をコントロールできるとは思わねえほうがいいぞ」
「コントロール? そんなことしない。聞かないなら、ヤルまでだから」
「何をやるってんだよ」
男は面白そうに目を細め、暗闇の中にいる誰かをちゃんと見ようと体をかがめた。
「もう一度言うよ。ここからおとなしく帰ったほうがいい。あんたのことは殺す意味がないから」
「笑わせてくれるじゃねえかよ、俺のことを殺すのか? できるとでも思ってんのか? 殺しのこのだったら俺の方が上だぞ」
「それはどうだろう。さ、時間切れだよ。そんなに気が長い方じゃないんだ。早く、出ていって」
「……いい度胸じゃねえか。やるか?」
「……」
「どうすんだよ、俺とやんのか? 俺が出ていかねえと断ったらどうする?」
「……ほんとにそれでいいの?」
「どうすんのかって聞いてんだよ」
「…………」

