「わかった春麗ちゃん! よしっ、私が一緒に泳ごう!」
一瞬固まった春麗は、誰が何を言っているのか考えるのに少しばかり時間がかかった。
が、声の主がアルの幼馴染みの涼子からだと分かると誰にも気付かれない程度に眉をひそめた。あまり好ましくない相手なのだ。
そんな一瞬の反応を見逃さなかったメイは、春の腕をとり、
「じゃさ、涼子さんもみんなで行こっ。ねっ。私も泳ぐよっ」
「……でもメイちゃん水着無いじゃん」
「大丈夫だよ、濡れてもいいのは持ってきてるし」
ちらっと涼子の方を見れば、楽しそうにアルと話をしていて、その近い距離に春麗は更にイラッときていた。
「春?」
「……ん、なんでもなーい。わかった。じゃあ……」
やんわりとメイから離れると、そのままアリと涼子の方へ小走りに走り寄り、
「じゃっ、涼子さぁん、着替えに行きましょっ! メイちゃん水着ないからTシャツとショーパンだけど、一緒に泳ぐって言ってるしい、ほらっ、男の子たちも早く着替えてねっ」
アリとの間に入り込み、無理矢理に涼子をアルからはがして、わざとらしく腕を組んだ。
「うん、よしっ、じゃあ、行こうかっ、春ちゃん」
春麗が組んできた腕をぎゅっと握り返し、「春ちゃん、かわいー、妹みたいだなあ」となにも知らぬ顔で無邪気にはしゃぐ涼子に、引いている春は笑顔がうっすらひきつっていた。
「涼子さん、強いな」
「むしろほんとに分かってない気がしてるんだけど私」
「ま、春麗にはあのくらいがいいだろ。調子狂わせてもらったほうが大人しくなる」
「あはは。まあ、春には初めてのタイプかも。って言い過ぎだよ小太郎は」
「ま、大丈夫だろ」
目の前で繰り広げられる光景に小太郎は面白がり、メイは何も起こりませんようにと心の中で願っていた。

