A RUTHLESS KILLER


 春の痙攣がおさまると、アリはようやく春の頭から手を離した。脱力した春麗はごとんと音を立てて倒れ、首もとからは赤い血が水溜まりのように広がってきた。


「……アリ、おまえなんてことすんだよ。嘘だろ。春麗はおまえの彼女だろ? なんでこんなひどいこと……」

「なんでって、それは小太郎、春ちゃんが犯人だからだよ。この殺人計画を企てた張本人だからだ。僕だって被害者だよ。君たちだってそうだろ」

「……春は、春は……絶対そんなことしない。あんたがけしかけたんでしょ! それに何よ、さっきは私のこと犯人扱いしておいて今度は春に……どうなってんのこれ。もう考えられない」

「メイちゃん、聞いてくれ。そうでもしなかったら春ちゃんは隙を見せなかっただろ」

「そんな話もう信じられない。もう、あんたなんか信じられない! 春を返してよ!」


 アリに飛びかかろうとしたメイを止めた小太郎は、そのままアリから遠ざけた。アリの手にはまだナイフが握られている。




「……もうその辺でいいだろ」



 ぽつりと言った言葉は重たく床に落ちた。戸張が感情のない目でアリのことを睨んでいる。


「そもそもあんただってここにいるのはおかしいよね? 空き巣が何を言ったって聞いてはもらえないよ」

「……ほら、俺のこと分かってんじゃねえか。確かに俺は空き巣に入ったけど、なんも盗っちゃいねえよ」

「犯すつもりだったんでしょ」

「うるせえ黙れ。でもまだやってねえ。それに殺人はしねえよ。それと、お前が犯人だっつー証拠はちゃーんと俺の頭に入ってる」


 とんとんと自分のこめかみを叩いた戸張は、アリがナイフを握りしめるのを見逃さなかった。