「そうだろ、春、この女がやったんだよなあ? こいつがみんな殺したんだ」
アリは、腹から流れる血を必死に抑え、春を丸め込もうとした。
「あの女のせいでみんな殺された。そうだろ?」
「……なに言ってんのアリ」
春はアリが何を言いたいのか分からずに眉を八の字に下げて左右に首を振る。その度にツインテールが揺れる。
「あの女がみんなをけしかけて、恐怖で支配したんだ。殺したのもあの女だ。小太郎、お前も手伝ったんじゃないのか? 春、そうだろう? 俺とおまえは何も悪くない。違うか? メイ。そうだ、こいつのせいだ。春、メイさえいなくなれば俺たちの無実を証明できる。俺たちは無実だ。みんなメイが悪い。そうだろ?」
「ちょっと待ってよ、何言ってんのよ、なんで私が」メイがすかさず話を割る。
「そうだ。お前を騙して犯人に仕立てあげようと言い出したのもこいつだ! こいつさえいなくなれば自由なんだだ! 俺は、俺はまた自由になれる! これは現実じゃない。そうだ。おかしいんだ」
戸張は呆れてぽかんとし、刑事は面白いものを見るように唇を右に上げて鼻で笑っている。
メイと小太郎は、アリのまさかの言動と展開にしどろもどろになっていた。
「おい、おまえもう見苦しいからやめ……」
戸張がやっと口に出したことばの合間に、春が倒れているアリのもとへ走り、懐から短刀を素早く抜き、メイ目掛けて走り出した。
「おま、ふざけんな!」
戸張が咄嗟に春のツインテールを掴もうとした。その手はぎりぎりで空を掴む形となった。

