「誰かいるのか?」
返事はない。
今開けるから、開いたらゆっくりと両手をあげて出てこい。いいな!」
刑事の問いかけにはやはり何も答えない。
「開けるぞ! 自分で出てこい。いいな!」
唾を飲む。戸張と刑事は目を合わせ一度頷く。刑事がゆっくりと扉を開いた。
突如として出てきたのは、血まみれの腕だった。
力なく床に落ちた腕、指先が少しだけ動いた。
「死んでねえ、まだ生きてる!」
戸張と刑事は走り寄り、扉を開けてそこに倒れている人を引きずり出した。
腹から血を流し、身体中か血まみれになっていた。
痛みに顔は歪み、小さくうずくまっているのは、アリだった。
「奥に……殺人……がいま……す。なんとか、逃げてきましたけ、ど、……中に……まだ、助けて」
震える声で助けを求め、涙ぐみ、鼻水まで垂れ流している。
刑事はすぐに外に待機している仲間に連絡を入れ、二人が中に入ってきた。
そんなアリの様子に戸張は冷たい眼差しを落としていた。
それに気づいていないアリは、分からないように口許を緩ませていた。
戸張はしっかりとその顔を確認し、ポケットに手を入れた。

