「おい。姉ちゃん、そこにいんだろ。話をしよう」
戸張の問いかけに春はびくついたが何も答えなかった。
「そこにいるのは分かってんだ。それに、おまえがそこにいるってことはよ、あの兄ちゃんに裏切られたってことなんじゃないのか? ああ? じゃなかったらおまえはここにはいねえだろ? 違うか? そこから飛び降りることができねえんだろ?」
「…………」
「いいかよく聞け。おまえが探してる兄ちゃんはもう近くにはいねえぞ。おまえもろとも見捨てたってことだ。おまえは捨てられたんだよ。俺らと一緒にな、捨てられて殺されるんだ。この中でみんな仲良く焼け死ぬんだってよ」
「そんなことないもん! アリはそんなことしない! 私のこと殺したりしない!」
口を覆ったときには既に遅し。しっかりと戸張の耳に春の声は届いていた。もちろん他の三人にも。
「なあ、ここ開けてくれや。俺らみんなあいつに騙されたんだ。お前も俺らもみんなあの兄ちゃんに騙されてたんだよ。言ってみりゃお前も被害者だ。そうだろ? ここを開けて策を練ろうや。あの兄ちゃんだって怖くて逃げてるに違いねえ。一緒に手を組んであの兄ちゃんを助けてやろうや」
「…………アリが……怖くて逃げた? 助ける? 何バカなこと言ってんの」
「お前はどうだ? そこに一人でいて怖くねえか? 仲間もいない。飛び降りることもできない。あの兄ちゃんは外に一人だろう? 不安だったんだよ、今でもきっとな」
「私は……」
「あの兄ちゃんだって怖いんだよ。でもお前には言えなかった。怖くて動けないって言えなかったんだよ。これからあの兄ちゃんがどうするか知ってるか? もしかしたらお前が来るかもしれないって思って、」
「アリが? アリはそんなことしない! 私を置いてったりしない」

