「……ちょっと、うそでしょ、なんで、なんでいないの! アリ!」
春が窓から身を乗り出してアリを探すがどこにもその姿は見えない。
合図は送ったはずだ。あとは飛び降りるだけだった。
でも、どこにも自分を受け止めてくれる人の姿はない。アリの姿はどこにも見えない。
遠くで車が燃えている。きっとそれもアリがやったに違いない。
「アリ!!!!!」
大声で叫んだけれど、その声はアリには届かない。
頭を抱え、「どうしようどうしようどうしよう。どうしたらいいの? ねえ、どうしたらいいの?」と独り言を言いながら部屋の中を行ったり来たりした。
「アリーーーー!!!!!!!」
叫んでもその声は燃える火の音にかき消される。
「おいおい、中にいる姉ちゃん、聞こえるか? おまえやっぱり裏切られたじゃねえか。そうだろ?」
聞き耳を立てていた戸張は、落ち着いた声色で語りかけるように扉のむこうの春に声を送る。語りかけながら一人肩を揺らし、力任せに叩く小太郎と中西を、
「どいてろ。俺に任せろ」肩をつかんで後ろに引いた。
「何か策があるの?」メイがシャツの裾で口を覆いながら戸張に詰め寄る。
「もうちょっとシャツめくってくれてもいいぜ。おっと、やめとこう。俺まで殺されちまう」
戸張はすっとメイから距離を取り、「俺が話をつける」と、みんなをいったん自分の後ろにやった。

