焦げ臭い。と最初に感じたのは小太郎だった。
すぐに引き返して様子を見に行ったときにはもう一階は煙で充満していて降りられる状態ではなかった。
口元を手で覆い、屋根裏まで戻るとみんなに降りれないことを伝えた。この扉のむこうに入るしか方法はないと言った。
目の前には分厚い木の扉。
中には春がいる。ここを開けてもらわなければ助からない。下へ行く道は断たれたのだ。外へ出られる窓もない。
「春! お願い開けて! じゃないとすぐ煙がこっちまできちゃう!」
「春、早く開けろ! そこにいたらお前だってやばいんだぞ!」
小太郎がドンドンと叩き始めた。
戸張は遠目からこの扉を睨み、中西は小太郎と同じように扉を蹴り始めた。もちろん罵詈雑言がその口からはとめどなく弾き出されている。
「春! このままじゃみんな死んじゃう! お願い開けて! 春!」
「メイちゃんごめん。できない! だから早く帰ってって言ったのに!」
「そんなこと言ってる場合じゃない。お願い春、煙が、もう、そこまで……来てるの」
「ダメ……開けられない。もう無理だよ、どかせないよ!」
「どかせないってどういうこと?」
「メイちゃんごめん」
「春!」
小太郎と中西が力任せに叩くがびくともしない。
春の声はそれが最後となった。あとは何を言っても返ってこなかった。

