「アリ。この肉どうするんだ? てか、これなんの肉だよ? すげえ塊だけどなんだこれ。牛?」
「ああ、それか。それはね、ふだん他所じゃなかなか食えないやつだよ」
「まじかよ。高いやつってことか。おまえほんとすげーよな。いつもこんなん食ってんのかよ、羨ましい。ほんじゃ下ごしらえだけしとくか」
「うん、そうしよう。って、高いかどうかは別として、いい肉だから塩だけで充分だから、あとは焼くだけにしといたら簡単だよね」
男二人は既に台所に立っていた。
肉切り包丁でいろいろな分厚い肉をぶつ切りにし、塩コショウで味を調えている。
野菜を切り分け、買ってきた酒類やジュース類は冷蔵庫に入れて冷やしておいた。
「これから来るおまえの友達って経済学部のやつか?」
「俺の友達はそうだけど女の子たちは知らない。みんな山岳部の奴らなんだけどね、キャンプとかBBQとか好きだからさ、それに山岳部の俺らがいたらなにかと役に立つから連れてけってきかなくてさ」
「え、女も来るの? なんだよそれなら早く言えよなー」
「何言ってんだよ、おまえメイちゃんいるだろ」
「そうじゃねえよ。心の準備ってもんがあんだろうよ。て、まあ、俺もそいつらと同じでただでここ来れるしキャンプなんて久しぶりだからテンション上がってるけど」
「なんか話ずれたけど、まあ楽しきゃいいよな。うまいものもあるしさ」
「それだよ。貧乏大学生には嬉しいことだよこれは。お前は金持ちの子供だからこのありがたみを分かってない」
「それは失礼。こんなところででよければいつでも。って、親が持ってるだけで俺のじゃないから」
「それでもいいんだよ。おまえは恵まれている。まじで、おまえほんといいやつだな」包丁を振りながらアリの方に向ける。
「包丁包丁。なんか怖いから、言い方とかいろいろ」
隣のログハウスに来ているのはアリの友人たちで山岳部所属の三人だった。
一人は男。残り二人は女だ。
男は子供の頃からアウトドアにハマっている生粋の山男。女二人は山岳部に入ったばかりの一年生で、キャンプの練習にちょうどいいとばかりに無理言って連れてきてもらっていた。

