金属がぶつかり落ちる音が、春のいる地下室に響いた。もちろん投げ落としたのは戸張だ。
春とアリに緊張が走る。
空気が止まった。
アリが素早く下に戻ってきた。戸張は壁の間に挟まり下を向き、気配を殺してアリが走り去るのをじっと待った。
もちろん上にいる中西にもその音は聞こえていて、ここに来るのは時間の問題だった。
しかし、戸張はそこを狙っていた。
アリが春の元へ走った直後に上へ駆けあがった。
中西が叫びながら入ってくる前にあいつを捕まえなければならない。
扉を蹴り飛ばす。冷たい空気が流れてきた。のろのろしている時間はない。
誰も入って来ない。すぐ近くに中西はいるはずだ。あいつもこっちの出方みているのだろう。
殺気だった空気が伝わってくる。唾を飲み、
「……中西か? いるんだろう」
小声で呼びかけるが返事は無い。
「中西。俺だ。戸張だ。そこにいるなら返事しろ」
「…………」
「お前が誰を追ってるのか知らねえが、こいつはお前の手にはおえるもんじゃねえ。だから俺と組め」
「……まじで戸張さんすか?」まだ殺気立っている。
「今から出てくから、いいな。とりあえず時間がねえ。分かったな」
「……」
戸張は辺りを警戒しながら、素早く地下室から抜け出した。

