中西は両手にナイフを持っている。
関節を外して手錠を解いた時にできた切り傷のところには包帯のかわりに薄いタオルを巻いていた。
目は血走り怒りに興奮している。
自分をこんな目に合わせた『あの女』を殺すためにここまでたどり着いたのだ。
「ここにいるのは分かってんだよ! さっさと出てこいよ!」
唾を吐き、そばにあった椅子を蹴り飛ばした。
誰かがこっちへ来る気配を瞬時に感じとり、戸張の動きが固まった。死角になる位置に体をねじ込み、闇と一体化して気配を消し、薄く瞼を閉じた。
「アリ。誰なの?」
「分からない。でも、あいつのほかにここに来てるのがいるってことは確かだな」
「嘘でしょ。一体誰が来てるっていうの?」
「それは分からない。とりあえず確認して、必要があれば殺す。お前は下の獲物を見えないように隠しておいて」
「わかった。くれぐれも気を付けてね」
「ああ」
上では中西が叫んでいる。何かを雑に壊し始めている音も聞こえてきた。
戸張はアリの後ろ姿を目で追いながら小さく舌打ちをした。
なんとかこいつよりも先に上に行かなければならない。じゃないと中西は簡単に殺されるだろう。
となれば…………

