「一輝さん、この前はすみませんでした。」


俺は頭を下げた。

いつもなら優しく許してくれる一輝さんは

今はここにはいない。



「……お前らの姫は誰だ。」


「え…」


「お前らの姫は誰だって聞いてる。」


うわーこえー。


「…由茉です。」


「どうして姫を放っておく。

お前らにとって姫はそんなもんか。

姫よりあの女の方が大事なのか。」


「……。」


俺らはなにも言えなかった。

由美さんより由茉の方が大事に決まってる。

でも…そんなの矛盾してるよな…


「お前らがそんなんなら

由茉に姫はやらせられない。

由茉はお前らのこと信じてたんだ。

唯一の友達を失って笑わなくなった由茉が

お前らを信じてから笑うようになったんだ。

今、由茉はまた笑っていない。

その原因がお前らなら俺は許さない。

兄として、お前らを許さない。」


俺らはなにも言えなかった。

全部俺のせいだな。

心配させまいと黙ってたけど

話せばよかったかな。


「由茉に会いたいです。」


俺は咄嗟に言った。

謝りたかった。


「それは無理だ。

由茉は今家にいない。」


「え…じゃあどこに…」


「それは言えない。由茉に口止めされてるからな。

でも簡単に会えるところにはいない。

爽、調べても無駄だからな?

俺が由茉を隠してるから。」


「…どうして突然?」

一昨日まではいたのに…