心が冷えていくよう。

でも、それが彼の選択だというのなら、仕方がないのかもしれない。



今泣くことはずるい。

優しい彼に気を遣わせたくなんてないから、緩めたばかりの唇をぎゅっと噛み締める。



「でも、それでいいんだ」



思っていたものと違うはるくんの言葉を耳にして、首を傾げる。

瞬きを繰り返した。



「笑花」



はるくんがわたしの名前を口にした。

指が甘やかすように目元を優しくさすり、涙を奪う。



「俺のせいで傷ついてよ」

「っ!」

「それで俺を、君が傷つけて」



傷つくこと。

傷つけること。



どっちも本当は嫌だし、できるだけ避けて生きていけるなら。

きっとそっちの方がしんどくないんだと思う。

そう思って、ここまで来た。



だけど、



「恐れないで、そばにいて」



君がそう言うから。

わたしはようやくわかったよ。



逃げてちゃだめなんだ。

こわがってちゃいけないんだね。



苦しくても、傷だらけでも、わたしはわたしのままで。

ただ大切なものを想う。

君を想う。



それが、恋というものだから。