「忘れないでね」

「なにを?」

「俺が想っているのは笑花だってこと。
なにがあっても、これからずっと変わらないってこと」

「っ!」



思わず恥ずかしさに耐えきれず、顔を両手で覆う。

きっと耳まで色濃く染まって、真っ赤になっているんだろうと自覚しつつ、こくこくと頷いた。



耳にはるくんの笑い声が注ぎこまれる。

これ以上ないくらい、はるくんが優しい甘さを孕んだ声で、わたしにもう1度囁いた。



「好きだよ」と、囁いた。






君への恋心に気づいてから、どれだけの時間が流れたのかな。

短いようでとても、とても長い時間。



小さな出来事でも、君が関わるとわたしにとっては全て特別だから日記に残したくなって。

それだけじゃ飽き足らず、自慢して回りたくなるくらい嬉しくて。

とても濃密な日々だった。



────今。

憧れて、焦がれて、たまらなく欲しかった人がわたしを好きだと言う。



ばからしいかもしれない。

人には笑われちゃうかもしれない。

だけどわたしは、この瞬間のために生きてきたんだと、本気で思ったの。



世界で1番恵まれていると感じた。

とびきりの幸せを知った。



そのことは今でも変わらない、一生忘れたくない出来事。

なのに、覚えていたのに、忘れていた。



わたしにとって、はるくんにとって、大切だった……ふたりの始まり。

はるくんの想いは、わたしの胸の中に確かにあったんだ。