「俺は確かに……傷ついていた。
そのことは否定できない」

「ほら、だから、」

「でも! ……でも、俺を傷つけていたのは、笑花だよ」



なににも例えることのできない、言葉にできない衝撃がわたしを襲う。

思わず息を呑んだ。



「君が、別れを切り出した時。
俺はもうふたりの関係をどうすることもできないことに傷ついたんだ」



彼の言葉に、死んでしまうと思った。

辛すぎて、悲しすぎて。



────愛おしすぎて。



「ごめんな、周りがどう思おうと関係ないって、そんなことどうでもいいって思ってた。本当の俺は、ずるくて最低だから」



そんなことないよ、と声もなく首を振る。

彼に抱き締められたまま必死で横に振り、わたしの髪が彼の頬を叩いた。



ありがとう、と吐息がかすかな笑みと共にわたしの耳へと注ぎこまれる。



「俺は平気だったけど、笑花は周りを気にして傷ついていたんだよね」

「……」

「そのこと、知ってたよ」

「え?」

「俺は傷ついたうえで、どれだけ辛くても、なにを捨てても。
……笑花に俺を選んで欲しかった」



それが、俺の願いだった。