「電気もつけないで、どうかした?」



眉を下げて、心配そうな表情。

優しい彼らしい言葉に、わたしはどんな表情をしたらいいのかわからなくなり、えへへと首を傾げる。



「夕日が綺麗だなぁって、思ってね?」



そう言って夕焼け色に染まる彼の瞳を見つめる。

とろりとした熱のこもったそれは、なんて美しいんだろう。



「そっか」

「うん。あとね、はるくんを待ってたんだ」



日直の仕事をしていたはるくん。

友だちみんなに今日は先に帰っていいと言っていたのを耳にした時から、わたしは教室に残って待っていようと思っていたんだ。



一定の距離を保つわたしと君。

少し遠い自分の席から扉のところに佇むはるくんにあのね、と声をかける。



「わたしのこと、嫌いになっていいんだよ」



わたしなんかを無理して好きなままでいなくていいんだよ。

もう苦しまなくて、いいんだよ。



だってわたしたちはもう恋人なんかじゃない。

円満に別れを決めた、ただのクラスメート。

もうそばにいる理由なんて、想い続ける意味なんてないんだもん。