「俺のことよりお前ら、課題終わらせなくていいの?」

「うわ、忘れてた!」

「やっべ! はるー、頼むー!」



はるくんの言葉にわーわーとまた騒ぎ始める彼らがはるくんにすがりつくも「知らないよ」と流されている。



空気がまた変わって、もう誰もわたしのことなんて話題にしない。

それなのに、みんな笑っているのに、



「っ、」



はるくんがみんなの中心で視線を向けられていない瞬間だけ、そっと憂いた瞳をしていた。



彼が普段と同じように見えるのは、彼が同じように見せているから。

気を遣わせないように、誰にもなにも言われないように、誤魔化して騙しているんだ。



ふとした瞬間の息をするだけでも苦しそうな表情。

伏せられた瞳の奥でどれほどの切なさとやるせなさを感じているのか。



「……見たくなかったよ」



彼のこんな表情、見たくなかった。

見たくて、別れたわけじゃなかった。



はるくんに、こんなにも想われていたなんて。



ああわたし、この人が好き。

────とても、好きなんだよ。



だから今度こそ、本当のお別れをしなきゃいけないね。



君をもう傷つけることなんてしたくない。

わたしはたくさんの人に囲まれるはるくんに、孤独を感じさせるなんて嫌。

幸せそうにしていて欲しいの。



はるくんのことがまだ好きだよ。

これ以上ないくらい好きだから、さよならだよ。