「……そう、だよね」



なにもおかしなことなんてない。

はるくんはただ、学校から帰っていただけ。



真っ直ぐ自分の家に向かっているのかもしれないし、どこか店にでも寄るのかもしれない。

友だちの多い彼のことだから、誰かと待ち合わせだった可能性もある。



だからわたしのことを待つどころか存在を気にすることもない。

曲がり角の先にいなくたって、不思議なことはなにひとつない。



こんな風に慌てて、ばかみたいなことをして、騒いで。

そしてどきどきしているのなんてわたしだけだなんて知っていたのに。



「っ、ぅ……」



どうして涙が滲んでしまうのかな。



溢れる涙を抑えこむように、掌を熱い目元にぐっと押し当てる。

それでもそれは隙間から頬を伝い、ほたほたとマフラーに落ちてじわりと濡らしていく。



声をこらえることさえできず、その場にしゃがみこんだ。