「ねぇ、はるくん」



名前を呼べば、目が合う。

彼の瞳にわたしが映る。

そんな小さなことさえ嬉しいけど、うまく言葉を紡ぐことができない。



「あのね……」

「笑花」



呼ばれた自分の名前にびくりと大げさなくらい反応してしまう。



「言いたいこと、わかってるよ」



言い淀んだわたしに、そんな言葉が落とされる。

どきり、と胸がざわめいた。



ああ、やっぱり。

はるくんは、すごいね。

わたしのことを本当によくわかってくれている。



理解すると傷ついてしまうようなことさえも、気づいてくれている。



「さすがですね」

「当然ですよ」



わざと冗談めかしたように明るく口にすれば、同じトーンで返される。

そのことがなんだか楽しくて、くすくすとふたりで笑った。



いつも通り、笑った。



そして、



「……別れようか」



そう口にした。