指をきゅっと掌の中に包みこむ。

かじかんだ指先が比較的あたたかい温度をあっという間に吸いこんでいく。



ひとりきりの帰り道は手を繋ぐことがないから、どう頑張っても冷え切ったまま。

彼のぬくもりが恋しくて、自分の温度は冷たくて、……嫌になる。



ローファーと道路が触れ合う音だけを聞いていた帰り道の途中、何メートルか先のコンビニから出て来た人影。

それは、



「……はるくん」



わたしが1番求めている人。



彼はわたしに気づかないまま、いつも通りの道を歩く。



ひとりだなんて珍しいなぁ。

別れてからは帰りでさえも、ひとりきりのところなんてそうそう見かけなかったのに。

それはこの日が来るのを心待ちにしていたとでも言うように、たくさんの人が彼を囲んでいたから。



一定の間隔を開けたまま、静かに足を進めていると、まるでわたしが彼のあとをつけているみたい。

そんなことをするくらいなら声をかければいいのに、できないんだ。



わたしはもう、彼女じゃないから。