だからわたしは、好きな人のそばにいられることが嬉しいのに、純粋に喜んでいられない。



大好きな人の彼女になって、とても大切にされているのに。

それがこんなにも切ないものだなんて。

……あんまりだよ。



わたしだってクラスの人や彼を想う人に負けないくらいはるくんが好き。

本当に、大好き。



だけど、わたしと同じように彼に好意を抱いている人はたくさんいる。

春に告白した女の子みたいにわたしに怒りを抱いている人がいる。

そしてなにより、傷ついている人が数えられないくらい。



その原因はわたしだけど、責任なんて取れない。

受け止めることも、できないから。



────わたしたちはきっと、付き合うべきじゃなかったんだね。



「笑花? 本当にどうかした?」



そっと触れたはるくんのあったかい手が、クーラーの風と自分の考えによって冷えきった肩にぬくもりを伝える。

見上げた彼の表情は、ただひたすらにわたしを気遣ってくれるもの。



「……ううん、大丈夫。
楽しみにしてるね」



顔の筋肉を意識して使って、口角をゆっくりとあげる。

わたしを大切に想ってくれている瞳に、ひどい顔をしたわたしが映っていた。