反動で、振り返る。



「……り、く……?」



そこには凌空が立っていて、今あけたばかりの部屋のドアを、反対の手で静かに閉めた。



───パタン。


再び外部から遮断され、静けさに包まれる部屋。



あの頃は、目線の高さが同じだったのに。


隼人と変わらないんじゃないかってくらい、見上げる位置に凌空の顔があった。


あたしたちの間に、ほとんど距離はない。



それはまるで、"あのとき"みたいで。




「あ、あの……」



少し震えながら唇を開くと。


凌空は、あたしの唇へ静かに指を乗せた。