「隼人はどう?初戦でいきなり先発とか、めちゃくちゃ緊張するよね……」
結良は俺の足をチラッと見たあと、不安そうに眉を下げた。
緊張を気にかけてるんじゃなくて、俺の足を心配しているのはあからさまで。
「この足じゃ、不安か?」
「えっ、そういうわけじゃ……」
「心配ないって。この大事な初戦に、出場記念として俺を起用するわけないだろ?」
そう言って、おでこを軽く弾く。
「そう……だよねっ」
おでこに手を当てた結良に、笑顔が戻る。
「この体と18年つき合って来て、大丈夫だと思ったから、俺は1番を受け取ったんだ」
1番をつけさせてもらう以上、万全の状態で臨むのは当然。
甲子園に行きたいからなんていう欲のために、安易なことはしないさ。
県大会、1番をつけていた凌空への礼儀でもある。
「結良、握手して」
「握手?」
戸惑ったように差しだす結良の手を握った。
「パワーチャージ」
これからボールを握る右手に。
「なにそれっ」
白い歯をこぼしながら結良が笑う。
一番のパワーは……結良の笑顔だ。
「オッケ、チャージ完了!」
「では、行ってらっしゃい!!」
笑顔の結良に見送られ、俺はベンチを飛び出した。