祝賀ムードはその日だけで。
次の日からは、甲子園に向けて厳しい練習が始まった。
まだまだ青翔メンバーとの夏が続く。
みんなと野球が出来る。
あたしはそれが嬉しくてたまらないよ……。
それともうひとつ嬉しいこと。
隼人の経過は良好で、全治2ヶ月は見るように言われていた怪我は、まだ1ヵ月経っていないのに、もう普通に歩けるまでになっていた。
それでも隼人は無理をしないように、歩くときは松葉づえを使っている。
「どうかな……」
暑さを増したグラウンドで、あたしは不安を口にした。
決勝戦から数日たった今日、新たに選手権大会用の背番号が渡されるんだ。
隼人が選手登録をしてもらえるかどうか、心配でしかたないよ……。
「大丈夫に決まってんだろ」
そう言う凌空が、一番落ち着かない様子だった。
そして、背番号発表のとき。
「1番……矢澤隼人」
監督が読み上げた名前に、体中に電流が走るくらいの喜びを感じた。
選んだ上に、1番に置いてくれた広田監督の想いにあたしは深く感動したんだ。
今までのチームへの貢献度。
隼人の努力、苦労。
全部、報われた瞬間。
良かったね、隼人……。
嬉しくて嬉しくて、続く発表を聞きながら、あたしは静かに涙を流していた。
それからあっという間に壮行会やら取材やらがめまぐるしく行われ。
甲子園入りしたときには、隼人は怪我の影響など全くないほどの復活を遂げていた。