時間になり、両校が整列。
見えない火花が散る。
「お願いしますっ!!!」
気迫あふれる挨拶で、試合が始まった。
桜宮は初回から樋口投手を投入してきた。
同じく、青翔も今日は凌空で勝負をかける。
ただの決勝戦じゃない。
両校のプライドをかけた本気の勝負。
抜群の投手力を誇るふたりを要したこの試合は、今までみたいな快音はなかなか聞けない。
さすが3年連続甲子園出場校だけあって、そう簡単には打たせてくれない。
「あ~っ……!!!」
いい当たりになると思った日野くんのライナーは、ショートの選手がダイビングキャッチ。
歓喜の両手をあげようとしたベンチメンバーが、メガホンを叩きつけて残念がる。
「ナイスバッティング!」
悔しそうな顔をして戻ってきた日野くんは、ベンチに引き揚げてからも、樋口投手の投球に合わせて、スイングするマネをしてタイミングを計るほど、修正に余念がない。
0-0のまま均衡を貫いていたゲームが動いたのは、7回表だった。
ストレート、カーブ、フォーク、色んな球種を駆使して打ち取っていた凌空がつかまった。
回が進んだことで、タイミングを合わせた3番選手が快音を響かせたのだ。
「ワアアアアアアーーーーーッ!」
ツーベースヒットとなり、ノーアウト2塁。
スタンドは今日一番の盛り上がり。
桜宮高校の桜色のメガホンが振り回され、まるで優勝したかのようなお祭り騒ぎ。
その後は、落ち着いてファウルフライとセカンドゴロに打ち取ったものの、セカンドゴロの間にランナーが3塁に進んだ。