「余計なものは何も背負うな。あの1番は俺のもんだって、堂々と胸張って強い気持ちで押してけよ!背負うなら、プライドだけ背負え」
「……隼人……」
力強く俺を見つめる凌空の瞳に、自信の色が戻ってくる。
「だから、自信もって球放ってこい」
そして。
「結良を絶対甲子園に連れてってくれ」
俺にはもう叶えてやれない願いを口にすると。
「いや」
凌空は首を横に振った。
「俺は、隼人と結良、ふたりを甲子園に連れてく」
「……」
「結良に言われたんだ。隼人の夏を終わらせるなって。だから俺は投げてる」
「……っ……」
俺の夏……?
万一早く回復したら、登板できるかもしれないって思ったりもした。
でも、そんな甘いもんじゃないってのもわかってた……。
「絶対甲子園を見せてやる。俺は必ず、隼人を甲子園のマウンドにあげる」
ドクンッ……
儚く消えそうだった夢が、凌空の言葉でまた動き出す。
ほんの少しだけ、色づく……。
「……だから隼人もっ、リハビリ…頑張れ……っ……うっ……」
凌空はそう言うと、顔をくしゃくしゃにして下を向いた。
……っ。
俺だって、こみあげてくるものが抑えられなかった。
「隼人に……誇れるような投球するからっ……絶対に今日……勝ってみせるからっ……ううっ……」
喋れなくなった凌空の肩に手を回した。
俺だって喋れねえ……。
胸がつまって、喉が熱くてたまんねえ……。
「じゃあ……俺行くわ……」
「……おう」
お互いにその顔を見れないまま、俺たちは別れた。
頑張れ頑張れ。
遠ざかっていく足音に、エールを送りながら。