やべっ。
人に見られた上に指摘されて、誰だよ……と肩を小さくしながら声の方に顔を向けると。
「な、なんでここにいんだよっ……」
そこにいた人物に、俺は目を丸くした。
「今日決勝戦だろっ!?」
それは、あと数時間後に決勝戦を控えた凌空だったから。
「こんなとこに来てる場合かよっ、なにやってんだっ……」
去年の同じ日。
2年生エースとしてかなりのプレッシャーを抱えていた俺は、早朝から学校のグラウンドで練習していた。
よりによって今日、こんなとこに来るなんて……。
焦る俺とは反対に、凌空は穏やかな顔で言った。
「隼人の顔が見たくなったんだ」
ハッとして、思い出す。
俺達が顔を合わせたのは、あの事故以来だったことを……。
正確にはその前から結良を巡って冷戦状態だった俺たち。
久々の対面に、しばらく俺達は言葉も交わさずに、ただお互いを見つめていた。
言葉に出来ない想いが沢山ある。
……それはきっと、凌空も同じ。
許すとか許してくれとかそんなやり取りはいらない。
ただ、こうしてまた向かい合えたことが、すごく嬉しかったから。
「座れよ」
壁沿いに置いてある椅子に凌空を促す。
先に座った俺の隣に腰掛けると、凌空は切り出した。
「結良のこと……あんときは、マジで悪かった」
……部室で食ってかかってきたときのことか?