5階の談話室。


大きい窓から降り注ぐ陽の光。


外の緑は風に揺れて、光が水辺を反射させる。


ようやく、待ちに待った夏がやって来たのに。


隼人の夏は……終わっちゃった……。



涙でにじむ景色を、どのくらい見ていたんだろう。



「結良ちゃん」



後ろから声を掛けられて振り向けば、隼人のお母さん。


さっきよりもやつれた表情をしていた。


無理に笑おうとするその頬にも、涙のあと。



取り乱す隼人を、どんな思いで受け止めたんだろう……。



「おばちゃんっ……」



こらえられなくて、抱き着いて泣きじゃくった。



「結良ちゃん……」



何もかも、夢だったらいいのに。


明日になったら、また隼人とグラウンドで笑い合えたらどんなにいいんだろう……。



大きく揺れるあたしの背中に優しく手を添えたおばさんの声が、優しく届く。



「隼人のところ、行ってあげてくれる?」


「でもあたし……」



正直躊躇った。


なんて言っていいのか分からないし、心の整理のつかない今は、あたしの顔なんて見たくないかもしれない。



「あの子はね、結良ちゃんが側にいてくれるだけでいいと思うから」



……そんなこと……。



「……お願い……」


「……」



でも、目の前の現実から逃げるわけにいかない。


……会わなきゃ……。


辛い隼人から逃げたら……もっと隼人が孤独になるような気がして。