「チクショウっ……!!!!」
ドンッ……ドンッ……。
拳を作り、廊下の壁を叩く凌空。
「……んで、隼人なんだよおおっ……!!!隼人より先に俺が見つけてれば……俺が事故に遭えば良かったんだ……」
……っ……。
こみあげるものが抑えられない。
この夏のために、隼人はたくさんたくさん、練習してきた。
ただ、甲子園に行くために……。
ゼロから野球と向き合いたいって、あたしとも別れて最後の夏に賭けてた。
「うっ……ううっ……」
なのに神様、こんな仕打ちしなくてもいいでしょ?
隼人の3年間の野球生活は……こんなことで幕を閉じるの……?
隼人は何も悪くない。
何も悪くないのにっ……。
全ての引き金は、あたしだった……。
あたしが、隼人の夏を奪ったんだ───
悲しくて苦しくてやりきれなくて。
冷たい涙が頬を濡らす。
おばさんが病室に入って数分後。
「うああああああっ………!!!」
部屋の中から、隼人の叫び声が聞こえてきた。
……胸が、張り裂けそうだった。
その声を聞いた凌空も、壁に手をついて頭を垂れたままジッと動かず、目を瞑っていた。
そのあとも、何度となく漏れてくる隼人の声。
「……っ……」
あたしはたまらず、その場から駆け出した。